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東京地方裁判所 平成5年(ワ)11897号 判決

東京都港区西新橋一丁目七番一三号

原告

社団法人 日本音楽著作権協会

右代表者

理事 中西禮三

右訴訟代理人弁護士

佐藤隆男

東京都新宿区中井二丁目二〇番六号 二〇四号

被告

橋本加津

右訴訟代理人弁護士

小川栄吉

主文

1  被告は、原告に対し、金三三八万一五三一円及びこれに対する平成五年八月四日から支払済みにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

この判決の第1項は、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告

原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律(昭和一四年法律第六七号)に基づく許可を受けたわが国唯一の音楽著作権仲介団体であり、内外国の音楽の著作物の著作権者からその著作権ないし支分権(演奏権、録音権等)の移転を受けるなどしてこれを管理し、国内の放送事業者をはじめ、レコード、映画、出版、興行、社交場及び有線放送等各種の分野における音楽の著作物の利用者に対して音楽の著作物の利用を許諾し、右許諾の対価として音楽の著作物の利用者から著作物使用料規程に定める使用料を徴収し、これを内外の著作権者に分配することを主たる目的とする社団法人である。

原告は、社交場において、ピアノ等の楽器によって演奏され、またはカラオケの伴奏で歌唱される殆ど全ての音楽著作物について、内国の音楽の著作物については著作権者との著作権信託契約を締結し、外国の音楽の著作物についてはわが国の締結した著作権条約に加盟する諸外国の著作権仲介団体との相互管理契約を締結することによりその著作権ないし支分権(演奏権、上映権等)の移転を受けるなどしてこれを管理している(以下、その著作物を「管理著作物」という。)。

2  被告

被告は、平成元年ころから、東京都新宿区歌舞伎町二丁目一〇番地六号ピア新宿ビル四階において、日曜及び祭日を除く毎日、午後七時ころから午前〇時ころまで、バー「ソシエール中野」(以下「本件店舗」という。)の営業をしてきた。

3  被告の行為

その間、被告は、本件店舗にビデオカラオケ装置及びピアノを設置し、次のとおり、日曜及び祭日を除く毎日、午後七時ころから午前〇時ころまで、原告の管理著作物を、原告の許諾を受けないで、ピアノによる生演奏や弾き語りにより演奏し、またはその伴奏ないしビデオカラオケ装置による伴奏によって顧客に歌唱させて演奏し、これを来集した不特定多数の顧客に聴かせていた。

(1) ビデオカラオケ演奏

平成元年一一月五日から平成三年九月一日までの二一・七五か月間

一日当たり三〇曲、一か月当たり二〇日営業

(2) 松宮泰栄のピアノ演奏

平成三年九月二日から平成四年一二月二五日までの三〇三日間

一日当たり少なくとも二〇曲

(3) 杉本憲一のピアノ演奏

平成三年一二月一〇日から平成四年一二月二五日までの二五一日間

一日当たり少なくとも三二曲

4  被告の責任

被告は、本件店舗において、原告の管理著作物をピアノにより演奏させ、あるいはビデオカラオケにより演奏させることが、原告の著作権を侵害することを知りながら、または過失により知らないで、前記3のとおり、原告の許諾を受けないで、原告の管理著作物を演奏させ、原告の著作権を侵害したものであるから、これにより原告が被った損害を賠償すべき義務がある。

5  損害

原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」に基づき、「著作物使用料規程」(平成元年三月二九日認可)及び「著作物使用料規程取扱細則」(昭和六二年四月一日施行)を定め、文化庁長官の認可を受けているが、これによると、原告の管理著作物の一曲当たりの著作権等の行使につき通常受けるべき金銭の額である使用料は、業種、座席数、標準単位料金、演奏の方法等によって類別区分された料金表により定められている。

本件店舗の業種はバー、クラブ、カフェーなど酒類の提供を主たる目的とするものであってホステス等の社交員の接待が通常伴うものに該当し、座席数は四〇席まで、客一人当たりの標準単位料金は二万五〇〇〇円までであるから、ビデオカラオケ伴奏による歌唱(著作物使用料規程第2章第2節4の備考<17>)及びピアノ演奏とも、別紙別表15の1により一曲当たりの使用料は一七〇円となる(ただし、ビデオカラオケ伴奏による歌唱分は、一曲当たり六八円の限度で請求する。)。

したがって、損害額は次のとおりである。

(1) ビデオカラオケ演奏分

六八円×三〇(曲)×二〇(日)×二一・七五(月)=八八万七四〇〇円

(2) 松宮泰栄のピアノ演奏分

一七〇円×二〇(曲)×三〇三(日)=一〇三万〇二〇〇円

(3) 杉本泰栄のピアノ演奏分

一七〇円×三二(曲)×二五一(日)=一三六万五四四〇円

(4) 消費税

(1)ないし(3)の合計の三パーセントとして、

三二八万三〇四〇円×〇・〇三=九万八四九一円(円未満切捨て)

右(1)ないし(4)の合計は、三三八万五一五三一円となる。

6  結論

よって、原告は、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害金三三八万一五三一円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払済みにいたるまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は知らない。

2  同2の事実のうち、被告が平成元年ころから、東京都新宿区歌舞伎町二丁目一〇番地六号ピア新宿ビル四階において、日曜及び祭日を除く毎日、本件店舗の営業をしてきたことは認める。

3  同3の事実のうち、被告が本件店舗において、平成元年一一月五日から平成三年八月三一日までビデオカラオケ装置を設置し、平成三年九月一日から平成四年一二月二六日までピアノを設置していたことは認め、その余の事実は否認する。

本件店舗は、時期によって顧客数が異なり、営業時間を通してカラオケ演奏をしていたわけではないし、顧客のいない場合にはピアノ演奏をしていなかった。また、松宮泰栄は、ホステス兼ピアノ奏者として雇用していたもので、同人がピアノ演奏をしていたのは、自分の顧客がない場合でかつ杉本憲一がピアノ演奏をしていないときに限られており、補充的にしていたものである。

4  同4は争う。

5  同5の事実は否認する。

本件店舗の座席数は二〇席であり、標準単位料金は二万五〇〇〇円であるから、「著作物使用料規程」によれば、包括的使用許諾契約を締結したときのビデオカラオケ伴奏による歌唱分は月額使用料六〇〇〇円、ピアノ演奏分は月額使用料三万六〇〇〇円である。原告は、包括的使用許諾契約を締結する場合以外の使用損害金につき独自の計算により請求しているが、懲罰的意味合いをもった一曲当たり一七〇円の請求は、実損としても過大なものである。

三  抗弁(消滅時効)

1  原告は、被告に対し、平成五年六月三〇日、本訴提起により著作物使用料の請求をしているが、請求が使用時から三年以上を経過したものについては時効により消滅している。

2  被告は、平成五年八月三〇日の本件第一回口頭弁論期日において、右時効を援用した。

四  抗弁に対する認否

抗弁1の事実は否認する。

原告が、被告の著作権侵害行為を知ったのは、平成二年一〇月三一日に、原告職員が本件店舗を訪れたときであり、民法七二四条の消滅時効の起算点は同日である。

第三  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

一  いずれも成立に争いがない甲第二五号証ないし甲第二七号証、甲第二八号証の一、二、甲第二九号証の一、二及び弁論の全趣旨によれば、請求原因1の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

二  請求原因2の事実のうち、被告が平成元年ころから、東京都新宿区歌舞伎町二丁目一〇番地六号ピア新宿ビル四階において、日曜及び祭日を除く毎日、本件店舗の営業をしてきたことは当事者間に争いがなく、被告において、本件店舗の営業時間が午後七時ころから午前〇時ころまでであることを明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。

三1  請求原因3の事実のうち、被告が本件店舗において、平成元年一一月五日から平成三年八月三一日までビデオカラオケ装置を設置し、平成三年九月一日から平成四年一二月二六日までピアノを設置していたことは当事者間に争いがなく、右事実にいずれも成立に争いのない甲第一三号証、甲第一七号証の一ないし三、甲第一八号証、甲第一九号証の一ないし三、いずれも原本の存在及び成立に争いがない甲第一四号証の一ないし四、甲第一五号証、甲第一六号証、いずれも証人堀之内清彦の証言により真正に成立したものと認められる甲第一〇号証ないし甲第一二号証、甲第二四号証、いずれも弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第三〇号証ないし甲第三二号証、証人堀之内清彦の証言、弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。

(一)  被告は、平成元年一一月五日、訴外いづし商会から、ビデオカラオケ装置一式(パイオニアLC-V三〇オートチェンジャーシステム)を代金二二〇万円で購入し、本件店舗に設置した。

被告は、平成三年九月二〇日、右いづし商会に対し、右ビデオカラオケ装置一式を代金五〇万円で売却した。

(二)  被告は、平成三年七月一五日、訴外株式会社昭和物産からアップライトピアノ一台を代金三九万一四〇〇円で購入して、本件店舗に設置し、平成四年一二月二六日、右ピアノを訴外津村勝彦に売却した。

(三)  被告は、松宮泰栄を、平成三年九月二日以降ホステス兼ピアノ奏者として雇用したが、同人の平成四年一二月二五日までの勤務日数は、少なくとも三〇三日であり、同人の勤務時間は午後八時から午前〇時までであって、基本給とは別にピアノ演奏料の支給を受けていた。

被告は、杉本憲一を、平成三年一二月一〇日以降平成四年一二月二五日までピアノ奏者として雇用したが、その間の同人の勤務日数は、二五一日であった。

(四)  原告の職員である飯田研二及び小島芳夫は、平成四年五月二九日午後八時一二分から午後九時四八分までの間、本件店舗を原告の調査員であることを秘して顧客として訪れ、原告の職員堀之内清彦は、同年一〇月七日午後八時四四分から午後一〇時三四分までの間、同様に本件店舗を顧客として訪れ、また原告の職員である山脇浩は、同年一一月四日午後八時四五分から午後一一時三五分までの間、同様に本件店舗を顧客として訪れ、合計三回にわたって本件店舗の営業態様を現認しあるいはホステス等から聴き取って調査したところ、本件店舗の標準単位料金は二万五〇〇〇円前後であり、座席数は三一席であり、月間演奏日数は二〇日で、午後八時から午前〇時までの四時間、男性のピアノ奏者(杉本)と女性のピアノ奏者(松宮)が三〇分ごとに交互に演奏し、男性奏者は客の歌唱の伴奏もし、自身も歌唱するが、女性奏者はピアノ演奏のみをしていたこと、開店当初からカラオケ伴奏による歌唱もされていたことなどの事実が判明した。

(五)(1)  前記平成四年五月二九日の原告職員による調査時におけるピアノ演奏の曲数は、一時間三六分の間に二六曲で、うち二一曲が原告の管理著作物であることが確認され、その内訳は、男性奏者(杉本)による原告の管理著作物の演奏が一三曲、女性奏者(松宮)による原告の管理著作物の演奏が八曲であった(これは一時間当たり杉本による原告の管理著作物の演奏が八・一二五曲、松宮による原告の管理著作物の演奏が五・〇曲と換算される。)。

(2)  前記平成四年一〇月七日の原告職員による調査時におけるピアノ演奏の曲数は、一時間五〇分の間に二九曲で、うち二七曲が原告の管理著作物であることが確認され、その内訳は、男性奏者(杉本)による原告の管理著作物の演奏が一五曲、女性奏者(松宮)による原告の管理著作物の演奏が一二曲であった(これは一時間当たり杉本による原告の管理著作物の演奏が八・五七曲、松宮による原告の管理著作物の演奏が六・八五七曲と換算される。)。

(3)  前記平成四年一一月四日の原告職員による調査時におけるピアノ演奏の曲数は、二時間五〇分の間に四一曲で、うち三九曲が原告の管理著作物であることが確認され、その内訳は、男性奏者(杉本)による原告の管理著作物の演奏が二五曲、女性奏者(松宮)による原告の管理著作物の演奏が一四曲であった(これは一時間当たり杉本による原告の管理著作物の演奏が八・八二曲、松宮による原告の管理著作物の演奏が四・九四曲と換算される。)。

(六)  社団法人輿論科学協会が一九九一年七月から一九九二年六月まで、三か月を一期としてその間二〇〇店、一年間分通算で八〇〇店の店舗を原告とカラオケ使用料契約を結んだ店舗から無作為抽出し、その歌唱結果を集録した「カラオケ店における一時間当たり平均歌唱回数についての分析」によれば、右店舗における一時間当たりの平均歌唱回数は一二・七回であり、一時間当たりの平均歌唱回数が六回以上の店が九四・四パーセント、店別歌唱回数分布の構成比は正規分布の場合に極めて類似していることが判明し、一九九二年七月から一九九三年六月までの調査結果も同様であった。

2  被告は、本件店舗は営業時間を通してカラオケ演奏をしていたわけではなく、ピアノ演奏になってからも顧客のいない場合にはピアノ演奏をしていなかったし、松宮のピアノ演奏は補充的なものであった旨を主張し、証人橋本勝明の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる乙第一号証には、一日当たりのピアノ演奏は、杉本において一二〇分、松宮において九〇分が最高である旨の証言及び記載がある。しかしながら、前掲甲第一〇号証ないし甲第一二号証によれば、ピアノ奏者の交代の際、五分ないし一〇分程度の間隔が空くことはあっても、原告の職員による三回にわたる調査の際、いずれも三〇分交代でピアノ演奏が行われ、前記1(五)認定の曲数の演奏があったと認められることからすれば、前記橋本証言及び乙第一号証の記載部分はたやすく信用できない。

3  右1認定の事実を総合すれば、被告の原告の管理著作物の演奏については、次のとおりであったものと認められる。

(一)  ビデオカラオケ演奏について

ビデオカラオケ装置を設置した平成元年一一月五日から右装置を売却した平成三年九月二〇日以前である同月一日までの二一・七五か月間、一か月の平均営業日数である二〇日間、ビデオカラオケ演奏をしていたものと推認され、本件店舗の営業時間は五時間であるところ、前記1(六)認定のように一時間当たり平均歌唱回数が六回以上の店舗が九〇パーセントを越えていることからすれば、被告において特段の反証をしない以上、少なくとも原告が請求する一日当たり三〇曲の管理著作物を演奏していたものと推認される。

(二)  ピアノ演奏について

松宮泰栄は、被告に雇用された平成三年九月二日以降本件店舗のピアノが売却された平成四年一二月二六日の前日である同月二五日まで、三〇三日間本件店舗でピアノを演奏し、一時間当たり少なくとも五曲の原告の管理著作物を演奏していたものと推認されるから、同人は本件店舗の営業時間である一日五時間のうちピアノ演奏が行われていた四時間の間に、少なくとも二〇曲の原告の管理著作物を演奏していたものと推認される。

杉本憲一は、被告に雇用されていた平成三年一二月一〇日以降平成四年一二月二五日までの二五一日間、本件店舗でピアノを演奏し、一時間当たり少なくとも八曲の原告の管理著作物を演奏していたものと推認されるから、同人は本件店舗の営業時間である一日五時間のうちピアノ演奏が行われていた四時間の間に、少なくとも三二曲の原告の管理著作物を演奏していたものと推認される。

四  請求原因4について判断する。

1  前掲甲第二四号証、いずれも成立に争いのない甲第四号証、甲第五号証、甲第六号証の一ないし三、甲第七号証、甲第八号証、証人堀之内清彦の証言によれば、原告の職員笹森武彦が、平成二年一○月三一日、本件店舗を訪れ、被告が本件店舗において、原告の許諾を受けないでビデオカラオケ装置により原告の管理著作物を演奏していることを発見し、被告の従業員に対し、カラオケによる演奏についても、ピアノによる演奏についても、音楽著作物使用許諾契約の締結の必要性を説明したうえ、契約手続をするよう被告に伝えるよう要請したこと、原告は、平成二年一一月二二日以降、数回にわたり、被告に来会を求める書面を送付したり、原告職員において本件店舗に出向いたりして、契約の締結を求め、従前の使用料の支払を求めたが、被告においてこれを拒否したことが認められる。

したがって、被告は、遅くとも平成二年一〇月三一日以降は、原告の管理著作物を本件店舗において無断で使用することは、原告の著作権を侵害することを知りながら、前記のとおり原告の管理著作物を継続的に使用してきたものと認められる。

2  著作物を公に演奏する権利を著作者が専有すること及び著作権の保護期間は著作権法の定めるところであり、また、昭和六三年三月一五日、最高裁判所が「スナック等の経営者が、カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲の録音されたカラオケナープとを備え置き、客に歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による伴奏により他の客の面前で歌唱させるなどし、もって店の雰囲気作りをし、客の来週を図って利益をあげることを意図しているときは、右経営者は、当該音楽著作物の著作権者の許諾を得ない限り、客による歌唱につき、その歌唱の主体として演奏権侵害による不法行為責任を免れない。」と判示する判決を言渡し、右判決が当時マスコミ等により報道されたことは当裁判所に顕著である。したがって、仮に被告において、平成二年一〇月三一日より前は、ピアノやビデオカラオケ装置により他人が著作権を有する音楽著作物を無断で演奏することが著作権侵害に当たることを知らなかったとしても、法を知らなかったことを理由に過失を免れるものではない。更に、本件店舗のような店でピアノ又はカラオケで演奏される曲の多くは近年一般の人気を博している曲と認められるところ、これらは、著作権の保護期間内のものである蓋然性が高く、かつこのことは一般に周知のことであると推認されるから、仮に演奏された個々の音楽著作物が保護期間内のものか否かを被告が知らなかったとしても、知らなかったことにつき過失があったものといわざるを得ない。

3  したがって、被告は、本件店舗において、原告の著作権を侵害することを知りながら、または過失により知らないで、原告の管理著作物を演奏したことにより原告の著作権を侵害したものであるから、これにより原告が被った損害を賠償すべき義務がある。

五  請求原因5について判断する。

1  いずれも弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第二号証、甲第三号証によれば、原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」に基づき「著作物使用料規程」(平成元年三月二九日認可)及び「著作物使用料規程取扱細則」(昭和六二年四月一日施行)を定め、文化庁長官の認可を受けているが、これによると、原告の管理著作物の一曲当たりの使用料は、業種、座席数、標準単位料金、演奏の方法等によって類別区分された料金表(別紙のとおり)により定められていること、右「著作物使用料規程」の料金表は、包括的使用許諾契約を締結する場合は月額使用料が定められているが、包括的使用許諾契約を締結しない場合は、一曲一回の使用料が定められていることが認められる。右の「著作物使用料規程」及び「著作物使用料規程取扱細則」による一曲当たりの使用料についての定めによれば、業種がバー、クラブ、カフェーなど酒類の提供を主たる目的とするものであってホステス等の社交員の接待が通常伴うものに該当し、座席数は四〇席まで、標準単位料金は二万五〇〇〇円である本件店舗についてのビデオカラオケ伴奏による歌唱(演奏)及びピアノ演奏による一曲当たりの使用料は、いずれも一七〇円であると認められる。

2  被告は、原告が包括的使用許諾契約を締結する場合以外の使用損害金につき懲罰的意味合いをもった一曲当たり一七○円の過大な請求をしているが、本件店舗の座席数は二〇席であり、標準単位料金は二万五〇〇〇円であるから「著作物使用料規程」による包括的使用許諾契約を締結した場合の使用料の定め、即ちビデオカラオケ伴奏による歌唱分は月額使用料六〇〇〇円、ピアノ演奏分は月額使用料三万六〇〇〇円とすべきである旨を主張し、証人橋本勝明も同旨の証言をし、前掲乙第一号証にも同旨の記載がある。

しかしながら、原告の本訴請求にかかる使用料の算定根拠は、適法に文化庁長官の認可を受けた「著作物使用料規程」に基づくもので、右規程に定める使用料額が懲罰的意味合いをもつとか、過大なものであると認めるべき証拠はないうえ、前掲甲第四号証(「著作物使用料規程取扱細則」)によれば、第七条において、包括的使用許諾契約を締結する場合の条件として、

(1)  契約期間中、演奏の有無及び回数にかかわらず、支払義務を負担すること、契約不履行の場合は、二割の違約金を加算して支払うこと

(2)  契約締結時に、月額使用料の三か月分以上一か年分までの範囲内において定めた契約保証金を納付すること

(3)  原告の請求にしたがい、演奏または上映曲目を記録して提出することが定められていることが認められ、包括的使用許諾契約を締結する場合は右のような条件を課される反面月額使用料が定められているものと解されるから、右月額使用料についての定めを契約締結に応じない無断使用者である被告にも適用すべき根拠はなく、被告の右主張は採用できない。

3  以上の事実を前提に原告の損害額を算定すると、原告の請求原因5(1)ないし

(4)のとおりとなり、その合計は、三三八万一五三一円となる。

六  抗弁について

1  原告が平成二年一〇月三一日、被告が本件店舗において、原告の許諾を受けないでビデオカラオケ装置により原告の管理著作物を演奏していることを発見したことは、前記四認定のとおりであり(右の平成二年一〇月三一日よりも前に原告が被告のビデオカラオケ装置を使用して顧客に管理著作物を歌唱させていることを知っていたことを認めるに足りる証拠はない。)、本件訴訟の提起が平成五年六月三〇日であることは記録上明らかである。

2  本件請求は、不法行為に基づく損害賠償請求であるところ、右事実によれば原告は被告の行為を知って三年以内に本件訴訟を提起しているのであるから、被店の消滅時効の抗弁は、理由がない。

七  結論

よって、原告の本訴請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 高部眞規子 裁判官 櫻林正己)

表15(業種1から業種11まで)の1

生演奏1曲1回使用時間5分までの使用料

<省略>

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